実録!介護保険サービス事業者の実地指導の流れ。(下)

介護

メリークリスマス!今年もお世話になりました。明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。緩いペースでの更新が続くと思いますが生暖かい目でお付き合い下さいませ。

年末年始更新しなかったからって挨拶一気に終わらせるなよ!

(無視)
前回(実録!介護保険サービス事業者の実地指導の流れ。(上))からの続きです。今回は実地指導当日の事とチェック事項について書いてみます。

あくまで参考に留めておいて下さいね!

実地指導当日の流れ

さて、実地指導日の前日には準備を終え翌日を待ちました。ちなみに前日だからと言って必要以上に残業することはありません。前日も確か17時30分には退勤しました。

当日。朝9時から開始の予定です。
事務室の窓から見慣れない車が来たのが見えましたがなかなか降りてきません。
9時ピッタリに玄関に入ってくるつもりだな…と思いながら眺めていたのを覚えています。さすがお役所。

あいさつ

9時ちょうど、女性の主任専門員と、男性主幹の2名がいらっしゃいました。
わしら側の出席者は、事務長、わし、相談員、ケアマネジャーの4名。会議室に案内し、名刺交換をします。理事長(兼施設長)はこの挨拶だけで退室。

挨拶もそこそこに、さっそく「実地指導」が始まります。

主任専門員が基準について、主幹が報酬について、それぞれ分かれてチェックするそうです。なので、基準はわし、報酬は事務長が対応することに。相談員とケアマネジャーは、確認事項に応じて資料を用意したり都度説明してもらうことにしました。

実際の確認・指導事項

事前提出していた『自己チェックリスト』でチェックした項目に基づいて確認作業が行われます。また、前回指導事項が改善されたかどうかの確認も。そりゃ当然か。

嘱託医師の年齢に突っ込まれる

対面に向き合ったわしと主任専門員。

一番最初に「医療機関との契約書類等を確認します」との事で、嘱託医の契約書、履歴書、医師免許等の写しを提示。

履歴書に目を落とした主任専門員、開口一番

「この医師の生年月日と年齢おかしくないですか?」

えっ、生年月日…?

見ると、医療機関から提出してもらった医師の履歴書の生年月日と年齢が確かにずれている…。

「えっ、そこ!?」

一気に感じる冷や汗。気づけば浮いている腕の鳥肌。
開始早々、そんな細かいところを言ってくるとは!
意外なところから指摘されたので神経がざわつきます。

『あはは、病院から頂いた履歴書が間違っていたんですね〜!きづかなかったな〜』

と笑って誤魔化すようなこともできず。

さすが主任専門員、こちらも気が抜けない…。

きっと実地指導や調査を専門にやっているからこういう細かいところに気がつくんだろうな、と感心。

実際に確認された項目と使用した資料・書類

さて、ここからは先方からの確認事項とこちらが提示した資料・書類について一覧でご紹介します。

全てのエピソードを紹介したらキリがないので…。

どうぞ。

大まかにはこれらの事項について調査員からの求めに応じ当該資料を提示→そして口頭での質問に回答していく…という流れでした。

しかしペースが速い速い!矢継ぎ早に「次は○○についてですけど該当する資料はありますか?」と、淡々と、しかしスピーディにどんどん進んでいきます。ひー。

一通り終わったのは12:30頃。実に3時間超、休憩なしで進みます。
背中の汗が引かない。真夏だっけってくらい。

認定特定行為業務従事者一覧、喀痰吸引対象者一覧などは必要に応じてコピーを求められました。持ち帰って精査するんでしょう。

直後に口頭での助言・指導と事業所側からの質問タイム

書類確認が一通り終わった直後に、調査員から口頭での指導や助言があります。

「○○した方がベターだと思います」という助言から、「△△して下さい」という指導まで。

とうてい納得出来ないような内容のモンはありませんでした。

「報酬返還や指定取消になるような重大な違反はありませんでした」という言葉をいただき一安心です。いやもちろんそんな不正をしているわけはないんですが。

また、この場を借りてわしら側(事業所側)からも行政に質問。実地指導とは直接関係ないことでも運営上の懸念事項を質問して良いと思います。

わしも多床室から個室に転換した際の居住費の取扱いについて質問。調査員の方は担当ではなかったのですが「担当職員に伝達して折り返し返答する」との言葉をいただきました。
(実際、数日後に担当者から回答ありました)

後日文書での指導が届く

実地指導が終了して一安心…ではないです。

約1ヶ月後、所轄官庁から「実地指導結果通知書」が届きます。
そこに実地指導を経ての指導・助言項目が書かれており、特に指導事項については改善報告をしなくてはいけないとのことです。

ちなみに1ヶ月待たせてくれたにも関わらず、目新しい指導事項はありませんでした。当日に口頭で言われたモノばかりです。

調査員の方は必要な資料をコピーして持ち帰られていたので「何か追加で指摘事項があるかも…」と考えていましたが杞憂でした。ふう。

改善報告書を提出

実地指導結果通知書には「改善報告書」が同封されていました。

これは指摘された事項に対して「こんな風にします・こんな風に考えています」ということを回答する用紙です。指定期間内に記入して返信すればOKでした。

これで実地指導は一区切りです。

良かった良かった。

ま、この後は改善報告書で回答したモノ以外のこと(主に助言事項)について、より良いサービス作りのために検討して行くんですけどね。

その他実地指導の際のメモ

その他、実地指導で気づいた事などを列挙してみます。

  1. マスク着用、アクリル板設置。コロナ禍だから当然。
  2. 調査員は健康状態申告シートを持参し事業所に提出。併せて玄関で検温。コロナ禍だから当然。
  3. 基準・報酬の担当者と向き合い回答する形式。
  4. 規程・規則・重説等の文言や表現にも注目、解り易い文章かどうかに加え、それぞれの記述の整合性の確認も頻繁に行っていた。
  5. 勤務表の確認は行わず。
  6. 人員基準に合致しているかの確認(常勤換算法での計算)は殆ど行わず。
  7. ケース記録・会議録の捺印の有無は殆ど確認せず。
  8. コロナ禍に係る緊急短期入所受入加算の特例算定に係る確認は殆どせず。
  9. 主にケアプラン、喀痰吸引、身体拘束、介護事故あたりを細かく確認していた印象。
  10. 疑義箇所?に付箋を貼りメモをしたり、コピーを撮ったものを持ち帰っていた。
  11. 掲示物(指定表示、重説等の掲示)は殆ど確認せず。「あ、ありますね」くらい。

繰り返しますがコロナ禍だからこその対応だった部分も多々ありました。
実際に資料チェック会場である会議室の他には本当にどこにも立ち寄らず。当然居住空間に立ち入る事もありませんでした。仕方なし。
書類だけじゃなくて普段やっているケアの様子などソフト・ハードも見て欲しいんですけどね!

実地指導後の感想

実地指導とは、お上が「うるせえ!こうやれったらやれ!」って頭ごなしに言って来たり、それに対して事業所側が「やかましい!昔からこーゆーやり方してるんだコッチは!」と応酬する…

というような殺伐とした雰囲気には全くならず至って平坦に進んで行きました。進行スピードは速かったですが。

まとめ

巷では『実地指導』というと戦々恐々、お上から理不尽なお達しを受けないかと恐れ戦く事業所もあると聞きますが、全く怖がる必要はないと思います。

実地指導とは名前の通り、介護サービス事業者が基準・法令に違反していないか、適正に運営されているかを実地(=事業所)で直接確認・指導する制度のこと。

ならば積極的にその機会を活用しよう、という考え方が必要です。

普段のありのままを見てもらい、運営上気になっていることを突き合せたり、質問したりする場として捉えるのが(精神衛生上も)良いと思います(笑)。

今回も確認のスピードは速かったですが、指摘・助言された内容はいずれも「確かにな」と納得できるものばかり。
疑義・懸念事項についても、先方の質問に対してこちらも丁寧に回答すれば理解して頂けました。

理不尽な言いがかり的なものは全くありませんでしたし。

そりゃ自治体にとっても我々介護サービス事業者は貴重な社会資源・財産ですからね。「いぢめてお家取り潰しにしてやろう」って意図を持っているわけではないことは明白です。

また、仮にもわしらは数年・数十年と介護サービス事業を続けているという自負がありますのでね。たかが数年で人事異動があるお役所(嫌な言い方)のお役人さんの言うことを鵜呑みにするのではダメだとも思います。
きちんと理論と実践に基づいて、反論すべきところは反論し、意見が違う部分はしっかり意見交換するというスタンスが大切でしょう。そのために事業者側も、法令を読み込んだり知識を深めるのは最低限の責務です。

今後の懸念事項としては、令和3年度の介護報酬改定に伴う議論で「利用者への説明・同意は紙ベース以外も可、さらに押印も不要」という方針が示されたこと。
珍しく社保審が良い方向に舵を切ったなと思いましたが、ぜひ実地指導もこの改正に適した運用をして頂きたい。

大半の事業所は省力化・省スペース化のために介護記録は電子化していると思いますが「実地指導のために印刷して用意しておく」という本末転倒な現状があります。実地指導で求められているので再度物質化しているわけです。ナンセンス。

「電子化OK」と謳うわけですから、実地指導や各種調査提出も電子化して欲しいもんです。そこんトコロ!よろしくお願いいたします。

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