介護サービス事業者にとって『実地指導』というのは大ごと(と思っている人も多いでしょう)。今年、特養・短期入所の実地指導を行いましたので、一連の流れをご紹介します。
あくまで「本州最北端の県」の「特養」が「コロナ禍最中」に受けた「実地指導」について紹介しているので、参考に留める程度にしておいてね!
はじめに。
介護サービス事業者にとって『実地指導』はもしかしたら戦々恐々とする一大イベントかも知れません。
実地指導とは何か。簡単に言えば指定権者(都道府県・指定都市だったり市町村だったり)が実際に事業者まで出向いて「介護保険法や指定基準等に則ってちゃんと運営されているかなー」と確認・指導することです。
指定だけして「後は好き勝手にどうぞ」というわけには行かないので、まあ当然と言えば当然の制度です。
詳しい説明は『介護保険事業者 実地指導とは』で検索すると死ぬほど解説ページが出てくるのでそちらに譲ります。今回は今年、実際にわしが体験した実地指導について、時系列で紹介します。
今回の実地指導の前提
- 令和2年度に実施
- 本州最北端の県
- 当然コロナ禍の真っ最中
- 対象は指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)と、指定短期入所生活介護事業所(ショートステイ)を同時に。併設型・空床利用型のショートステイとして一体的に提供しているため
- 監査ではなく実地指導
通知~開催日前日まで
開催予定日の1ヶ月半ほど前。
県の封筒に入ったお手紙が事業所に届きます。
開封すると、いきなり目に飛び込む単語。

お手紙の標題は『令和2年度介護サービス事業者等に係る実地指導について』。
それを見たわしの一言目が「やるんかい」でした。
コロナ禍で自粛自粛の波が吹き荒れ、会合やイベントが悉く中止になっている当時。色々バタバタしていた中「実地指導が来るかも知れない」と考えていなかったので不意打ちでした。
でも通知が来たからには開催決定です。少しずつ確認・準備をして行かなければなりません。
やることの確認。
特養に異動してから、実地指導は初めてです。
まず通知に目を通し、やるべき事を確認しました。
[事前提出資料]
1.「行動障害のある利用者」リスト
2.各種加算等自己点検シート
3.従業者の勤務の体制・勤務形態一覧表
4.運営規程、重要事項説明書、利用契約書(サンプル)、パンフレット
これらは開催日10日前までに指定権者に事前提出
そして当日準備する資料もあるそうです。
[当日準備資料]
※事前提出資料に示すもののほか、次のもの
1.組織図
2.就業規則
3.雇用関係を証する書類
4.職員履歴書及び資格、経験がわかる書類
5.常勤・非常勤及び専任・兼任の員数がわかる職員名簿
6.職員勤務表
7.出勤簿またはタイムカード
8.入所者(利用者)が分かる資料(前年度平均及び当該年度の日々の入所者(利用者数))
9.入所者名簿
10.入退所に関する書類
11.施設サービス計画ほか入所者の処遇に係る書類
12.高齢者虐待防止、身体拘束禁止に向けた取り組みに関する書類
13.介護給付費算定に係る体制等に関する県への届出書(基本報酬算定要件に適合することを確認できる書類)
14.加算の要件に適合することを確認できる書類
15.介護給付費明細書
16.介護給付費請求書
17.利用料に関する書類
18.苦情に関する書類
19.事故に関する書類
20.喀痰吸引等を行うための登録に関する書類
21.喀痰吸引等の実施体制及び実施状況に関する書類
22.その他関係書類
結構あるなァ。
と一瞬ひるみましたが、よくよく見てみると普段当たり前に記録しているものばかり。
しかし、例えば組織図や職員勤務表などのように提出すべき資料がズバリ書かれているものはまだしも、『高齢者虐待防止・身体校則禁止に向けた取り組みに関する書類』『加算の要件に適合することを確認できる書類』などは「自分の事業所が管理している書類のうち、どの書類が該当するのか」を判断し確認・準備しなければなりません。
介護サービス事業者の記録や書類の多さたるや、皆さんが身をもって知っている通り膨大なものです。つまり、確認・準備だけでも時間は相当かかる。

冷静を装いつつ、脳内はこんな感じです。
担当を割り振る。
膨大な記録・書類を1人でやろうなんてどだい無理な話です。
普段から管理者クラス・相談員・ケアマネ・主任クラスの業務分掌・管轄書類は異なりますし。
なので実地指導に向けての資料も、確認の意味を込めて各者で担当を割り振ります。

県から送付された『資料リスト』をもとに準備担当者を決めていきます。
とは言っても普段やっている仕事に基づいて割り振るだけですが…。
大まかには、
- 規程規則・運営管理関係 → 管理者
- アセスメント・モニタリング・ケアプラン → ケアマネジャー
- 利用者ケア関係 → 主任クラス・生活相談員
- 介護報酬関係 → 事務長および関係職員(医療系の加算だったら看護職員とか)
- 委員会・会議録等 → 生活相談員
といったところでしょうか。
事前提出資料の作成。
事前提出資料のうち、
- 「行動障害のある利用者」リスト
- 各種加算等自己点検シート
- 従業者の勤務の体制・勤務形態一覧表
は作成する必要があります。
3の『従業者の勤務の体制・勤務形態一覧表』は普段から事業所毎に整理していると思いますが、1と2は県の書式に沿って作成する必要がありました。
「行動障害のある利用者」リスト
サービス利用者のうち、行動障害がある方のリストアップをして提出します。
正直、特別養護老人ホームを利用中の方はそのような方が大半ですが…。
利用者名・認知症自立度・行動障害の内容を記載してリスト化します。
実地指導の本番で重要な役割を果たすリストです。
各種加算等自己点検シート
自事業所が算定している報酬区分・加算に基づき、「加算を算定しているよ・していないよ」「条件を満たしているよ」を点検し申告するための書類です。
県に届出をしていても算定していない加算については申告する必要はないでしょう。
これに記入をして、事前資料として送付します。
これも実地指導の本番で重要な役割を果たすリストです。
算定加算の要件を充たしていないことが判明しても、充たしているかのように偽装するのはいけません。
書類に不備があったことに気づいても、新たに作り直したりてはいけません。
悪質な不正とみなされ報酬返還、最悪の場合は指定取消です。
大きいフォントで書かせてもらいました。
運営規程や重要事項説明書など
その他、運営規程や重要事項説明書も一緒に送付します。
これらは既に使用しているもののうち最新のものを1部ずつ送付すればOKです。
当事業所では、過去に作成したパンフレットがあるにはあるのですが、実態に沿っていない内容だったため作り直しを検討している最中でした。
事前提出資料にパンフレットも含まれていましたが、古いパンフレットを送るわけにもいかないため、注意書きを添えて直近の広報誌3回分(3ヶ月に1回発行しています)を送付しました。
結果、この件については特に指導を受けることはありませんでした。
対応資料の確認。
事前提出資料を送付したあとも、当日資料の確認・準備を忘れてはいけません。
前述の通り、提出すべき資料がズバリ書かれているものは良いのですが、多くは「自分の事業所が管理している書類のうち、どの書類が該当するのか」を判断し確認・準備しなければなりません。
これはもう各事業所で整備している書類の様式は異なりますので、項目毎に書類を1つずつ対応させていくしかありません。

これが一番時間かかります。
当事業所ではほぼ4年に1回実地指導が行われています。
その間、どれほど日々の記録をしていますか?それを再確認するだけでも一苦労です。
当然、普段の業務もありますので分担しながら少しずつ進めていくことが重要でしょう。
当日資料の準備。
実地指導前日ぐらいに、資料を一通り揃えて最終チェックをします。

普段、資料・書類の保管場所や保管方法はバラバラだと思います。
実地指導当日は順番に資料点検をしていくため、それらがすぐに取り出せるよう一箇所にまとめておきました。
コロナ禍ということもあり最初の通知文に「会場以外の立ち入りはしません」という文言がありました。それも、指定権者である県職員による資料点検が1箇所(会議室等)で行われることを示しています。
そのため事前に揃えた資料は会議室まで持って行きそこに置くことにしました。

当日を待つ。
これで準備万端整いました。あとは当日、県職員をお待ちするばかりです。
実地指導というと大ごとだと捉えてバタバタ焦る人もいると思いますが、わしは特養の実地指導が初めてなのにもかかわらず全く焦ることも緊張することもありませんでした。業務量は多かったですが。
だって「普段から皆ちゃんとやれているな」って思っていましたから。
続く。
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