国会議員がいなくなった介護業界

介護

2022年の参議院議員選挙が終わった。

選挙期間中に安倍晋三元首相が自民党候補の応援演説中、背後から犯人自作の銃で狙撃されて命を落とした出来事は日本中のみならず世界に衝撃を与えた。
銃規制も厳しく、世界的には「平和な国」と思われていた日本での凶行。この場を借りて心からご冥福をお祈りしたい。

短絡的な理由で犯行に及んだ山上徹也容疑者は決して許されるべきではない。厳罰を望む。

介護業界の集票率の低さ

さて、今回の参議院選挙が「自民党大勝」「維新躍進」「野党の影響力低下」「ガーシー当選」などセンセーショナルな言葉で総括される中、ここは一つ介護従事者の視点から見てコメントしてみたい。

わしはTwitterでこう呟いた。

特養はじめ介護事業所の全国組織である全国老人福祉施設協議会の組織内候補であり、全国老人保健施設協会、日本認知症グループホーム協会など各介護関係団体が推薦した、自民党の「そのだ修光」議員が2期目を目指して全国比例区に出馬。結果、当選はならなかった。

介護業界全体の危機感のなさ、組織力のなさがモロに露呈したと言える。

これで介護を代表して国会で発言できる議員は0になった。ゼロ。そのだ氏が唯一の議員であったのだ。

今回の参院選の自民党の全国比例区の当選状況を見てみると、おおよそ中位(第9位)で当選するには約20万票。当選ギリギリライン(第17~18位)で約12万票といったところ。

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※参考 NHK参院選2022開票速報サイト

一方、厚生労働省『令和2年介護サービス施設・事業所調査の概況』によると、全国の特別養護老人ホームの施設数は8,306。

20万票を取るためには特養1箇所あたり24.08人。12万票で良いなら14.45人で良い。

特養1箇所あたり15人の票も取れずに落選したわけである。

因みにこれは、あくまで広域型特養のみの数字。地域密着型特養、有料老人ホーム等居住系施設を含むとその数字は跳ね上がり、さらに1箇所当たりの必要得票数は少なくなる。

この事実を介護関係者たちがどう受け止めるかが非常に重要だ。

国会議員が不在になるとどうなるか

そして3年後に向けてどうするか。
再度参議院に立候補者を擁立するだろうが(近い時期に衆議院選も行われるだろうが6年間の国政への安定影響力を考えると恐らく参議院だろう)、今から考え行動しなくてはとても間に合わない。

何たって去る3年前…2019年の参議院選挙でも「介護の代表」の2人目を送り出そうとして全国老施協は組織内候補を比例区に擁立、この時は惨敗しているのである(比例候補者33人中28位・比例当選19名)。
今回の件と合わせて「こんなに介護業界は団結していないのか」と思われても仕方ない。

現場で働く介護職員は実感し難いかも知れないが、残酷に思うかも知れないが、介護の制度・方針や介護報酬は政治で決まる。介護業界の代表議員だけではなく、そうではない国会議員にも働きかけて介護業界に利のある行動を取ってもらえるように味方を作って行かなければ、財務省・厚生労働省の思惑通りに現場が翻弄される日々が続くことになってしまう。
参院選で2回連続で介護の代表が落選したことで、その他の国会議員は「介護業界は組織力がないな」「票にならないな」と思ったことだろう。つまり、介護業界の味方になる国会議員も減ってしまった。

「介護職員の待遇を良くしろ」「規制を緩めろ」「施設が足りない」「介護報酬アップを」との意見はもっともだが、幾ら声を上げても政治力がなければそれが通ることはほぼない。

わしは大卒後すぐ全国老人福祉施設協議会で事務局員として働いていたが、その時も介護関係の国会議員はいなかった。介護報酬改定に伴い「何とかプラス改定を」と全国の特養はじめ介護サービス事業者にアピールし、全国から50万筆超(確かこれくらい)の署名を集めたことがある。その時も、各施設の「想い」は充分にあった。
段ボール数箱にもなったその署名を意気揚々と厚生労働大臣に提出しようとしたが、担当者は不在で、職員さんに「あ、段ボールはそこの廊下の隅に置いておいて下さい」と言われる始末。
全国から集められた50万筆超の署名は、厚生労働省の廊下の突き当たりにまるで粗大ゴミのように置かれた。

いくら声を上げても、こんなもんなのだ。

その後、当時の全国老人福祉施設協議会の会長であった故・中村博彦氏が参議院選挙に当選し国会議員となってからは、目に見えて介護を取り巻く状況は変わった。

一番解りやすい指標である、介護報酬の改定率の推移を見てみるとご覧の通り。

関連性は明らかである。
議員不在期間はそりゃもう露骨に下げられている。平成27年の-2.27%は衝撃どころの騒ぎではなかった。

介護報酬改定だけではなく、介護の代表の国会議員がいたことで、介護職員の処遇改善が進んだり、新型コロナウイルス感染症対策が手厚くされたり、EPAや技能実習生として外国人人材を雇用することができるようになったり、ICT関係始め各種補助が厚くなったりと、介護業界全体に利する制度・政策が多く実施された。

これらのようなメリットは、少なくとも今後3年間の新設・改善は期待できないだろう。

確かに参議院選挙は解り難い。未だに比例区投票用紙に個人名は書けないと思っている人もいる。

しかし、この介護業界全体の政治に対する意識の低さ、団結力の弱さをどうにかしないと、今後ますます風当たりは強くなり、より厳しい介護事業所運営を強いられることは明白だ。

どうしてここまで、介護業界は政治力が弱いのだろう?

その続きは次回で。

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