新型コロナウイルス感染症を『正しく恐れる』

健康・感染症

さっそくですが常体やーめた!性に合わない。
さて、新型コロナウイルス並びに感染症が猛威を振るっていますが、より根拠の強い客観的な情報を得る努力をし、正しく恐れることが大事なのではないでしょうか。

昨今、世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス、ならびに同ウイルス性感染症(COVID-19)。わしの事業所でも面会禁止などの措置をとっています。生活の場でこのような制限を強いてしまうのは本当に申し訳なく思います。

ご利用者・ご家族・身元引受人の方には大変ご迷惑をおかけしております。

さて、メディアなどで散々報道されていますが、わし自身で情報を整理する意味でもここで今一度新型コロナウイルスについて確認してみました。

New York Times社の特集ページから

New York Times社の特集ページでは、以下のように書かれていました(英検4級の腕前なので翻訳は適切ではないとご理解下さい…)

同社では「6つの要素」として下記を挙げていました。

  1. ウイルスの感染力
  2. ウイルスの致死率
  3. 症状が出るまでの期間
  4. 感染者の移動・旅行距離
  5. 各地の対策の効果
  6. 治療またはワクチンの開発にかかる時間

ウイルスの感染力

箇条書きで列挙してみます。

  • コロナウイルスは感染者から約6フィート(1.8m)しか移動出来ない
  • どれくらいの時間生存しているかは不明

はしか等の他ウイルスでは100フィート(30m超)飛び、何時間も生存している種もあるそうです。

  • 感染者が何も対策を講じないと2~4人に感染する可能性。何もしなければアウトブレイク(爆発的集団感染)
  • 仮に5人が感染したそこから2.6人に感染が広がった場合、5サイクルで368人に拡散する。5人→18人→52人→140人→368人

インフルエンザは平均して1.3人。仮に5人が1.3人に感染させたとすると、5サイクルで45人。5人→12人→20人→31人→45人だそうです。
また、2003年にパンデミックを起こしたSARSはWHOが感染者を追跡・隔離したところ、1人あたりの感染者数を0.4人まで減らすことが出来たそうです。

  • 世界各国の保険当局はSARSの時のように封じ込めができるよう必死に努力しているが、世界中に感染者は増加している
  • 発生を効果的に抑制するためには、伝染の60%をブロックする必要がある

感染力は相当高い事が窺えます。伝染の60%をカットするのは相当大変だと言わざるを得ません…。

ウイルスの致死率

  • 死亡率は確定はしていないが、1%を超える
  • 季節性インフルエンザより高い
  • 中国で確認された罹患者44,000名を追跡したらおよそ50人に1人が死亡している
  • ウイルス感染者の81%は軽症、14%は重症、5%は重体

しかし一方でMERSは感染者の1/3、SARSは1/10が死に至りますが、それよりは致死率は低いとのこと。

わかりやすい図が掲載されていました。日本語に訳したうえで転載してみます。

How Bad Will the
Coronavirus Outbreak Get?
Here Are 6 Key Factors
  • 中国の罹患者を分析すると、高齢者は若年層より重篤になる可能性が高い。80歳以上の15%、70代の8%が死亡

インフルエンザでは1,000人あたり死者は1人未満。アメリカ国内では毎年200,000人がインフルエンザで入院し35,000人が亡くなっているそうです。

症状が出るまでの期間

  • 平均して感染から5~7日だが2~14日とも推測されている
  • 予防行動が不可欠
  • 潜伏期間中に隔離・観察を行うなどコントロールが必要
  • 潜伏期間にはムラがあり、長すぎる・短すぎると対策も困難になる

インフルエンザウイルスは潜伏期間は2~3日と言われています。感染した人が感染症発症前にウイルスを放出している可能性も高く単に「ウイルスを持っている人」を特定して隔離することはほとんど不可能と言えます。

コロナウイルスは潜伏期間に長短があり、一概には言えないようです。そのため、対策も難しい状態。

  • 主な症状としては、発熱、咳、呼吸苦、息切れ
  • 軽症の場合は風邪やインフルエンザ症状に似ている

風邪症状に似ていることも、発見が遅くなる一因であるかも知れません。

感染者の移動・旅行距離

  • 感染者を世界中に広めるのに充分なほど広範囲に移動している
  • 武漢の人口は1,100万人でニューヨークより多い
  • 1日3,500人の乗客が武漢から他国に直行便で移動しており、それらの都市は武漢以外で新型コロナウイルスの症例が最初期に発見された国となっている
  • 武漢から中国国内には200万人以上が移動している

2003年のSARS発生時は、中国人の海外移動は今ほど多くはありませんでした。
ところが現在は文字通り世界中に広がっています。アフリカや中南米にも多大な支援をしているのはご存知の通りです。

  • 結果、中国から他地域への移動はSARS発生時の約4倍となっている
  • 武漢の市長は「春節時の制限の前に500万人が移動した」ことを認めた
  • いくつかの国では、中国との明確につながっていない感染者が出ている(国内感染が顕著になっている)

すでに世界中には充分広がっていて、自国内でもどんどん感染している現状がある、ということです。

各地の対策の効果

  • 中国では新規患者の伸びは鈍化しているが、世界では加速度的に増えている
  • WHOは、初期に中国が都市封鎖に踏み切ったのを「感染者の居場所を追跡し、蔓延を抑制するのに効果的だった」と評価している
  • 多くの国が国内外の移動を禁止・自粛要請し感染者の移動を抑制している
  • 各国で入国者のスクリーニングやチェックを行っている
  • これらの対策では不充分であると主張する有識者もいる。シンガポール国立大学のClarence Tam准教授は「封じ込めがウイルス感染阻止になっている可能性は低い」と述べている
  • コロナウイルスの伝播(自国内流入)を防ぐのは、各国の保健衛生システムの強さに依存する

実際に都市封鎖や移動抑制などの措置は行われています。それが効果的だとWHOが述べている一方で、それでは不充分だと主張する学者もいます。

そして、当然ですが各国の保健衛生システムにより伝播・流入が阻止できるかどうかが決まります。衛生観念がない地域だと一気に広がってしまう…。

治療又はワクチン開発にかかる時間

  • いくつかの薬物が臨床試験をしているが、実戦投入は少なくとも1年先
  • 新型コロナウイルスのために承認された薬剤・治療方法はない
  • remdesivirという薬は有効であると考えられており、米国・中国その他で臨床試験中

SARS発生時はワクチン準備まで20ヶ月を要したそうです。そしてジカ熱の時には6ヶ月まで短縮できたとのこと。

  • コロナウイルスのDNAの解析を行っている
  • 少なくとも3つの企業(製薬会社)がワクチンの開発に取り組んでいる
  • Anthony Fauci博士は「ワクチンの安全性・効果を証明するためにより広範囲で臨床試験を行う必要があり、数ヶ月~数年係る可能性がある」と述べている
  • 1年後には一般的な利用が可能になるという希望的観測もある

以上がNew York Times社のまとめからの抜粋です。
具体的な数字を出していてとても分かりやすいです。特に感染者の広がり方はまさに爆発的であると改めて認識しました。

その他にもこちらに掲載しきれなかった情報もたくさんあります。ぜひ一度は同社のページを訪れて下さい。

山中伸弥教授の情報発信ページから

国内でのコロナウイルス関連については、iPS細胞で名高いノーベル生理学・医学賞受賞者、京都大学の山中伸弥教授のページに詳しいです。

以下、教授のページから抜粋してみます。

病態

  • 国、地域により致死率は異なる
    ドイツ:0.5%
    韓国・クルーズ船・武漢以外の中国:1~1.5%
    日本:2.2%
    武漢:4.5%
    イタリア:10%
  • 感染後、症状が出るまでの潜伏期間は1から17日とばらつきがある(平均は7日程度)
  • 感染しても症状が出ない場合がある
  • 感染してもPCR検査で陰性となる場合がある
  • 発症しても多くの場合は発熱や咳などの軽症
  • 高齢者や持病を持つ患者を中心に一部の患者では肺炎等で重症化、致死率も高い

感染

  • 感染力(基本生産数)は、まだ確定していない
  • 咳等の飛沫とドアノブ等を介しての接触で感染する
  • 集団感染(クラスター)が世界各地で報告されている
  • クラスター以外(家庭内など)でも感染する
  • 症状がなくとも、他の人に感染させる場合がある

対策

  • 手洗いやマスクしていても感染することがある。
  • ワクチンはまだ開発されていない
  • 効果の証明された治療薬はない

教授もやはりワクチン・治療薬は無いと述べています。長期戦になるのは仕方がありません。

根拠に基づいた情報を多方面から仕入れて整理する

これら情報発信ページで言及されているのは「根拠(エビデンス)が強く正しい可能性が高い」情報です。その他、山中教授のページでは可能性はあるが根拠がもっと必要な情報、根拠の乏しい情報なども掲載されているのでぜひ目を通しておくべきだと思います

様々な研究や臨床症状・診断により、今まさに「根拠」が構築されている最中だと言えます。
そして強い根拠、客観的事実に基づいた理性的な判断をしなくてはいけません。

山中教授は、新型コロナウイルスについて次のようにも述べています。

ウイルスにも弱点があります。ウイルスは人の力を借りてのみ猛威を振るいます。人が一致団結し、賢く行動すれば、ウイルスは勢いを失います。

山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

人がしっかりとした知識を備え、適切な行動を続ければ感染拡大は防げる見込みなのです。

関連業界団体の情報発信を利活用すべき

率直に言って厚生労働省から出されているコロナ関連の情報は莫大&文字量が多すぎてとても読めません。だからこそ信頼の置ける関係機関からの情報提供は貴重です。我々に代わって、分かりやすくまとめて解説してくれています。

そんな中で、特に介護サービス事業者の参考になるのが全国老人福祉施設協議会のページ。わしも以前関わりがありました。

同会のコロナ特設ページでは連日情報が更新されていますが、その中の対応方針チェックシートとフローが非常に参考になります。

職員編の一例

特に対応フローは職員・利用者ケア・経営編にわかれ、それぞれ求められる対応がコンパクトにまとめられており、このままマニュアルとして配布&掲示してOKなレベルです。

これらは全国老人福祉施設協議会のページに掲載されているので、関係者はぜひダウンロードして閲覧すべきです。

【毎日更新 コロナ特設ページ】老施協の活動

過去の例から考えてみる

ここで、一つ考えてみたいと思います。それは2009年に猛威を振るった新型インフルエンザ(A/H1N1)のことです。

当時、ヒトは全く新しいDNAを持つ新型インフルエンザウイルスに抵抗を持っておらず、あっという間に広がりました。WHOからパンデミック宣言が出され、感染者・死者が続出したのは記憶に新しいところだと思います。

しかし、徐々に対策は進められて行き終息へと向かいました。根拠が作られ、対応のセオリーが出来上がって行きました。
そして2年後の2011年以降、季節性インフルエンザと同様に扱われています。

つまり、新型インフルエンザは撲滅されたのではなく人と共存出来るようになったと言えます。

根拠に基づいた情報に沿って1人ひとり冷静な行動を

感染症の撲滅はほぼ不可能と言われています。

人類が封じ込めに成功したのは天然痘のみ。
(参考:apital ヒトが唯一勝利した感染症

つまり新型コロナウイルスも目指すべきゴールは『人との共存』です。
そのためには山中教授も述べられている通り、一致団結して賢く行動することが大切だと思います。

もちろんインフルエンザウイルスとコロナウイルスは違いますし、感染力や致死率も異なります。しかし、まずは自分自身が

  • 不要不急の外出は控える
  • 人混みは避ける
  • 発症地域には行かない
  • 普段通りの衛生管理対策(手洗い・うがい・消毒・マスク着用等)を徹底する
  • 正しいコロナウイルス及び感染症の知識を得る(マスコミに踊らされない)
  • 上記をしっかり行いながら、粛々と社会活動を続けていく

といった当たり前の感染症対策を意識して行っているか、もう一度見直しが必要ではないでしょうか。

例えば私たち介護サービス従業者が仕事をしなければ、高齢者の皆さんの生活を守ることはできません。
スーパーの従業員やトラック運転手など物流に関わる方、病院勤務の方なども同様です。

集団パニックになればなるほど、過剰な反応が続けば続くほど、混乱状態は長引きます。

正しく恐れる、ということが大事なのです。

1人ひとりがマスコミの報道や断片的な情報に右往左往せず、冷静に「強い根拠に基づいた行動」をとれば、ウイルスと人とが共存する終息の時期を迎えることでしょう。

願わくば、一刻も早くその時が訪れますように。

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